馬鹿ニヒルな事情なの

楽曲考察とその他雑記

アイカツ!「Signalize!」考察

Signalize! わか・ふうり・すなお・りすこfrom STAR☆ANIS
作詞:畑亜貴 作曲:NARASAKI

 

www.youtube.com

Signalize! 歌詞「わか,ふうり,すなお,りすこ from STAR☆ANIS」ふりがな付|歌詞検索サイト【UtaTen】

 

編成:

Vo,syn,Dr

 

構成:

intro-A-B-C-inter-A-B-C-D-inter-C-D-outro

 

特徴:

・新規コンテンツの女児向けアニメのOPでいきなりセオリーに則らない曲(わりかし落ち着いた曲調のテクノ)を持ってくる制作陣の覚悟。

置きにいく気が一切なかったように思う。


・歌詞は希望にあふれている。でもそれだけではない。後述。

 

ここが聴きどころ!:

・「残酷な夢が夢で夢になるんだ」がパンチラインすぎてここだけ独り歩きしてる印象であり、

このフレーズが一番難解であることにも異論はないが、

全体を俯瞰したときの初期アイカツ像(神崎美月とソレイユの関係)の表現そのものにこの曲の肝があると思っている。


まず、歌唱がわか(いちご)・ふうり(あおい)・すなお(蘭)・りすこ(美月)の4人いるにも関わらず、

りすこ(美月)のソロパートがない。

シングルのCDジャケットにも不在である。

参照:

Signalize!/カレンダーガール - TVアニメ『アイカツ!』 - わか,  ふうり,  すなお,  りすこ,  STAR☆ANIS | Lantis web site

 

神崎美月が歌うのは、

CメロとDメロのユニゾンを除けばサビ前の「挑戦待ってるよ」と「絶望なんてしない」だけである。

挑戦を待ち受けることができるのは、スターライト学園の中では絶対女王神崎美月をおいて他にいない。
(参考:Signalize! | アイカツ!歌詞パート分け


(ここはただの邪推になるが、「(もう)絶望なんてしない」も神崎美月が歌っているのは、

ソレイユというフォロワーが現れるまでは神崎美月は絶望していたという風にも読めるのではないか。

自分に憧れるばかりで食らいついてこようとしなかった他のアイドルたちに)

 

・逆に言えば、AメロBメロはソレイユの物語である。つまりは、神崎美月に憧れて追いかける新人アイドルの。
ただし、ただ憧れているわけではない、というのが重要な点である。

スターライト学園に在籍している生徒の中にすら、

神崎美月に憧れているだけで実際は手が届くわけがないと思っているアイドルも多いのではないか。

(だから神崎美月とスターアニスを組める星宮たちと、そうでない他のアイドルが生まれる。

もちろん、神崎美月を介さずとも自分の道を決めたアイドルの存在も忘れてはならない。)


そこへ来るとソレイユのパートは、

初っ端から「答えはもっと高い空の彼方/いいえ違うよ/僕の目にも見えた地の果て」と始まる。

ソレイユが3人とも神崎美月にあこがれてスターライト学園に通っていることはアニメ本編で何度も描かれていて、

アイドルとしてのひとつの「答え」が神崎美月にあることは間違いないだろう。

そしてその答えが「高い空の彼方」にあるかというとそうではなく、

「僕の目にも見えた地の果て」にあるというのだ。

地の果てというからには相当遠いのだろう。

しかし、空を羽ばたくことができなくても、走れば届く地上にある。

ことあるごとに「アイ!カツ!」の掛け声とともに走り込みをしていた彼女たちならばなおのこと、

現実的に手の届くところに「答え」があるという明示からこの曲は始まるのだ。

 

・また、ソレイユたちにはそれでも常に少しの不安がつきまとっているようにも見える。

「今を信じて」と自分に言い聞かせるということは、

今現在は結果が出ていないけど、まだ精確にはつかめていない「漲る何か」があるから、

不明確な未来のために今を信じようとしている、というように読める。

あるいは「今日は青い迷路だった」りもする。

範囲を「今日」としているのは、何をしてもうまく行かなかった日に眠りにつく前の反芻のようにも読める。

それに、「残酷な夢」ときた。

決してただうまくいくだけの物語ではない。

 

・「残酷な夢が夢で夢になるんだ」については解釈が本当に分かれる一節だと思うが、

三度出てくる「夢」はそれぞれ別のものを指しているのではないかと考えている。
(そもそも「残酷な夢①が夢②で夢③になるんだ」のフレーズの主述を整理すると、

「夢①が夢③になる(夢②によって)」である。)


まず「残酷な夢①」は未来予想図としての夢の側面が強い。

先に少し書いた、希望を持っていてもつきまとってくる小さな不安の延長線にあるもので、

「こうなってしまったらどうしよう」というネガティブな未来を予想したものである。

神崎美月みたいになれなかったどうしよう、

なんにもうまく行かなくてアイドルを諦めることになったらどうしよう。

そういう不安が、考えたくなくてもよぎるという、

具体的な「こうなりたくない」という逆説的な「夢」。


二つ目の「夢②で」は、一つ目の「残酷な夢①」を打ち消すパワーをもったものである。

つまり、夢①の反証となる、「こうなりたい」という将来の夢=目標だと読み取れる。


夢②によって、夢①は夢③になる。

残酷だった夢①が、ポジティブな夢②のパワーで打ち消されて夢③になる。

さすれば、夢③は「眠っているときに見る夢」の意味であり、

眠りから目覚めて「なあんだ、残酷な夢は現実ではなかった」と安心できはしないか。


つまり、「未来が暗いかもしれないという不安(=残酷な夢①)があるが、

(神崎美月を中心とした)将来の具目標(=夢②)があるので、

夢①という未来に対する不安を現実に持ち込まない(=夢③)ことができる」

という読み方ができるのである。

 

・頑張れば夢は叶う、というだけの話で終わらないのが畑亜貴の性格だとも思う。
というのも、「Chance for me」とか「ふるえる程の奇跡」とか「Get a luck」とか「take a chance」とか、

チャンスや運や奇跡をつかむことができる、というところまで含めてできないと夢は叶わないよ、と言っているようにも聞こえるからである。
さらにDメロで「Do the live(love), take a chance! Do you know, do you know?」と問いかける。

このDo you know?がチャンスをつかむことにまでかかっているのは、

まだ歩んできた人生が少ない女児だけに向けるには含みが大きくないか。

 

・とはいえ、

1番Cメロで「君と向かう場所はどこだろう/眩しい希望の中へ」「向かう場所はミライの/僕らの希望の中に」と、

まだどこにあるかも判然とせず向かう途中だった「希望」という語が、

2番では「僕らは希望の中さ」ときちんと中まで到達できているので、

この歌はきちんと前進できている彼女たちの歌であると言えるだろう。


そうすると落ちサビで再度未到達の希望に戻るのは、

これから希望を手にしようと努力を始めるべき聞き手への念押しのようなものかもしれない。

これは畑亜貴の性格を踏まえた上での意地悪な見方である。

1番ではあったサビ頭の「君と」が落ちサビでは削られているのは、

聞き手が自分ひとりで頑張るしかないよ、

という畑亜貴のメッセージだったらいいな(そして同時に、意志の弱い聞き手としてはとても嫌だな)、と、

畑亜貴の紡ぐ詞を愛する身としては思います。